AH-705(ATU)延長アダプタの製作

2025年3月3日月曜日

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AH-705(ATU)延長アダプタの製作

 1.はじめに(製作動機)

こんにちは。

仕事の卒業に合わせて、コールサインを再取得してQRVすることにしました。(2024年6月)
再開局に合わせて、リグは人気機種のIC-705を、アンテナは、ダイヤモンドのCPATUとアンテナチューナ(AH-705)を購入しました。

ご存じのように、CPATUはアンテナチューナ(AH-705)との組み合わせで、3.5MHzから50MHzまでラジアルなしで対応できるという便利なアンテナです。 これを自宅の固定アンテナとして使わない手はない!  と思ったのです。

しかし、AH-705は移動局を想定した製品のようで、コントロールケーブルは標準で2m、オプションでも5mまでしかありません。
自宅のアンテナは無線機から20-25m離れた場所に設置する計画のため、コントロールケーブルの延長が必要となりました。
ネット上には、固定局でAH-705のコントロールケーブルを延長して使っているOMの例がありませんでしたので、今回、このケーブルの延長に挑戦した内容をご報告させていただきます。


2. IC-705とAH-705の通信はどうってなるの?


(1) TUNE動作の様子を見てみましょう。


    a) IC-705からSTART信号を送る(約0.5秒)
    b) AH-705からKEY信号が送られ、その間、キャリアを送出する

        上がKEY信号  (IC-705にキャリア送信要求)
        下がSTART信号 (IC-705からTune開始要求),

(2) IC-705の電源投入直後のシーケンス


    IC-705とAH-705の間で、なにやら情報を交換している様子。

    時間軸を拡大してみました。

    さらに拡大。  2mのケーブルですが波形はかなりなまっています。


3. まずは単純にケーブルを延長してみました


まずケーブルを延長してみました。
延長するケーブルにはノイズに強いシールド付きのLANケーブル(STP)約25mを使い、LANケーブルを同軸の横にはわせて、IC-705とAH-705をつなげてみました。


屋外用 CAT6 PoE対応 30年の屋外耐候性PE(ポリエチレン)2重被覆

波形を観測した限りでは問題なさそうです。
後は、LANケーブルに13.8Vの電源を乗せてAH-705に供給すればOKのはずです。

LANケーブルの両端に下の回路を組んでテストしたところ、IC-705はAH-705を認識して問題なく動きました。

でも、ちょっと待ってください!

この延長ケーブルは直接IC-705に繋がっていますが、雷などは大丈夫でしょうか?

⇒ 愛機を守るためには絶縁が必要!!!

4. それで、絶縁付き延長アダプタを作ってみました


前と同じLANケーブル(25m)の両端にフォトアイソレータ(フォトカプラ)と絶縁型DCDCコンバータを使用した延長アダプタ回路を作成してみました。
コントロール信号も正常にやり取りができて、IC-705はAH-705を正しく認識できました。(電源投入直後のやりとり)

5. 見つかった課題


a) AH-705へのリモート電源供給が必要
    AH-705はアンテナ直下の高いところに設置するので、乾電池交換をなくすためのリモート電源供給が必要。しかし、今回使用した3WクラスのDC/DCコンバータ(12V250mA)では容量が不足。(AH-705のカタログには最大電流300mAと記載あり)

b) DC/DCコンバータのノイズが大きい
    スイッチング周波数(300kHz)から100MHzまでノイズが出る

c) 延長アダプタの電源を切っても使えるか?
    ノイズが邪魔な時は、延長アダプタの電源を切ってDCDCコンバータを止めたい。     電源を切ってもTune状態は変わらないか?
    (AH-705はラッチングリレーを使用しているので、ATUのTune状態は変わらない事を確認する。)

    対策1:リモート電源の検討


    AH-705の仕様書によると、Tune時の最大電流は300mAとなっています。(注: 実測では瞬間的に1A近く流れます。付録参照) そのため、今回使用している3WクラスのDC/DCコンバータ(12V250mA)から直接、外部電源端子(12-13.8V)に電力供給ができません。
    いくつかの実験と検討の結果、以下のようなDC/DCコンバータの組み合わせにしました。
    i)   3WクラスのDCDCコンバータを使うが電圧を下げて電流を稼ぐ。
    ii)  電源供給は、乾電池ボックスへ3V。(3V 500mAのLDOで過電流保護)
    iii) LDOの負荷側に1Ωの電流制限抵抗と、470uFの電解コンデンサを追加。
   

    対策2:ノイズ対策


    LPFを各所に追加しました
    LPFの効果はそれなりにありますが、同軸ケーブルと並行に25mも接しているため、DCDCコンバータのノイズを完全に遮断するのは困難という結論に達しました
    ⇒ノイズが邪魔な時は電源を切る!

    対策3:リセット対策


    最初にリグ本体(IC-705)をベランダに持って行って、Tuneを取った後、ケーブルを抜き差しすると、ATUのTune状態が変わってしまいました。(おそらく抜き差しのノイズが原因)
    AH-705は、ラッチングリレーを使用していますので、電源を切っても直前の状態を保持するはずです。
    実験の結果、ケーブルの抜き差しをせず、スイッチで電源をOffにした時は、Tune状態を保っている事が確認できました。

(注意) 一旦AH-705の電源を切った場合、次にAH-705の電源をOnにした瞬間にリセットが掛かります。周波数の変更が無くても、延長アダプタの電源をOnにした時は必ず再Tuneが必要です。

6. 最終的な回路構成はコレ!


最終的な回路構成は、こうなりました。


7. アンテナ側ATU延長アダプタの設置の様子


全体を日東電工のプラボックス (OP14-23A)に収納
(AH-705は延長アダプタのケースの後ろ。下の箱は、「高松オリーブハムクラブ」JH5YVCによるデュープレクサ「DUP50」)


電池ホルダに直接電源をつなぐため単3形 ダミー電池を使用


最終的にタワーに載せました


8. シャック側様子


こんな感じになりました。


使い方
1) リグとATU延長アダプタの電源をONにします。(ATUはリセットされます)
    電源を入れて、AH-705が反応すると、KEYのLEDがピカピカと点滅します。
2) リグの利用周波数をセットした後、Tuneを取ります(必須)
3) Tuneが取れた事を確認して、運用開始
 
運悪く目的の信号にDCDCコンバータのノイズが重なった場合は、Tuneを取った後、延長アダプタの電源をOffにしますが、Tune状態は保ったままで運用できます。  


9. おわりに


ATU延長アダプタをタワーの上に設置して以降、何のトラブルもなく運用しています。
最終的には、DC/DCコンバータのノイズ対策としてリチウムポリマー電池を使用する事は止めましたが、ノイズもさほど気になりません。
何より、ATUのお陰でSWRが非常に低いので安心です。
この記事が、どなたかの参考になれば幸いです。



付録 AH-705の最大消費電流について

実はノイズ対策として、リチウムポリマー電池と充放電制御ICを使用して電力を供給する回路を作成しました。
(AH-705のTune時の最大消費電流300mAに合わせて、300mAHのリチウムポリマー電池を使用しました。)
ところが、ATU用の電源SWをOnにすると(放電)過電流保護回路が働いて電力供給が止まってしまいます。
そこでAH-705に単三電池を接続して、電源投入時の電流を測定しました。
Channel 1 (黄色)は、1Ωの抵抗を単三電池に直列にして測定した電流(電圧)です。(500mA/divに相当)  [Channel 2 (水色)は、単三電池の出力電圧。1V/div]

これを見ると、電源を接続した後、約130ミリ秒後にほんの数ミリ秒ですが500mA以上の電流が流れています。これが原因でバッテリ保護ICの放電過電流保護回路が働くようです。
これを回避する回路も作りましたが、バッテリを使用するこの回路はコスパが悪く、最終的には採用しませんでした。

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